旬の人時の人
中やま智是さん(39) 異色の経歴を武器に活動するMBAデザイナー
(2017/2/11付)
シリコンバレーを中心にしたIT企業が急成長を見せる中、これまでは技術を持つエンジニアとビジネスに強いプロ経営者による共同経営が注目されていた。しかし、ここ数年はデザインコンサルタント会社の米IDEO(アイディオ)などの活躍を後押しに、経営メンバーに不可欠な第三の存在として経営に詳しいデザイナーが注目されている。
もとは建築意匠デザインを学んだ建築家志望のデザイナーだ。経営に興味を持ち始めたのは、自身が経験した暗中模索の日々にある。大企業への就職を嫌い、早期の独立を志していたが、思い通りにはいかない。仕事もなく本を読み漁る日々を送る中で稲盛和夫氏や北尾吉孝氏の著書に出会い、考え方や生き方が大きく変わった。
人が働くのはお金や地位のためではなく、人格を磨き人間性を高めるためだと自身の規矩が定まった。経験としてのケース・スタディを得る目的に加え、自らを磨き高めるため、20代の内に100社で働くと決意し、実行する。オフィスワークに留まらず、サービスや販売業、肉体労働まで依頼される仕事は拒まずに何でもやりこなした。
「経営において最も重要なことは、人を理解し、人をつくることである。20代の時に実際の現場でスポンジのように吸収した経験が人を理解することに役立っている。」と話す。市場のみならず企業もまた人で作られている。相手のためではなく、相手の立場で考えることが人を理解することに繋がる。デザインの力で人を幸せにすることに意欲を燃やしている。
なかやま・ともゆき
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。